第2807日目 〈部屋のお掃除;<パンドラの箱>をすべて開けてみた結果、とんでもないことに。〉 [日々の思い・独り言]

 大掃除のために買ったデッキブラシの到着日を1日間違えたので計画変更、予定入れ替え。明日をアパートの廊下の掃除日とする。
 では。
 困ってしまった。廊下に積んである<パンドラの箱>こと某倉庫会社にながくあずけていたダンボール箱を開梱したら、とんでもないことになっている。合計6箱を開けて、中身は火事以前にあずけていたゆえ綺麗な状態の本、本、本、おまけのようにコミケで入手した同人誌……。これをすべて取り出すと、どうなるか……。
 本の過半は古典のテキスト、上田秋成と折口信夫の研究書が占めていた(特集雑誌や大学紀要を含む)。意外だったのは中公文庫版折口信夫全集全巻が残っていたこと。いまはもうない伊勢佐木モールの古書店へ売り払ったとばかり思っていたからなぁ。『短歌』創刊号があるのは知っていたけれど、どうしてだろう、西村亨編『折口信夫事典』(大修館)が2冊もあるのは?
 西村亨の著書は『折口名彙と折口学』(桜楓社)という本が、一緒に出てきた。これを購ったのは、加藤守雄の件で問合せの手紙を出して、そのお返事をいただいたあとか。それとも、礼儀として著作を購い読んで、質問の枕に感想など認めたものであったのか。手紙の下書きが見附からないのでよく覚えていない。けっきょく直接お目にかかる機会のないまま、加藤の思い出をもっとお伺いすることもできないまま、いまに至っている。
 さて、問題の『折口信夫事典』だが、あっけなく解決したことをまず、ご報告させていただく。結論から申しあげれば、わたくしが架蔵するのは初版と増補版なのであった。1988年7月刊の初版と、1998年6月刊の増補版。いずれも編者・執筆者・出版社は変わらない。
 「可能な範囲で内容面のより正確な、より新しい見解を加えることとし、また、著作解題や研究文献目録にはこの十年間の新出資料を加えて、いっそうの便宜を図る」(増補版 P763)ことを目的に再編集された増補版1冊あれば事足りるのであるが、どうやらわたくしはこれの出る前に、出ることを知らずに旧版をどこかの古書店か当時の勤務先で購入したと思しい。たぶん、都内の図書館から一時期頻繁に借り出して読んだのが発端となり、やがてこれを手許に置いておきたいという望みがふくらんで購ったのだろう。それから旬日経ぬうちに増補版が刊行され、どこかのタイミングでそちらも購入したらしい。結果、『折口信夫事典』は2冊架蔵することとなり、旧版は倉庫にあずけ増補版を部屋に残し、後者はやがて火事の痕跡を留める結果となった。
 古典のテキストに関しては、本心から当時の自分を誉めてあげたい気分である。よくぞこれだけのものを散逸させることなく、そうして関心が薄れていたとはいえ処分することなく、ダンボール箱へ詰めこんだものである。未練がましさと潔さが、いまの僥倖をもたらしたのだ、とは言い過ぎか。
 岩波書店の旧新両大系がかなりの冊数あるのは勿論として、びっくりしたのは冷泉家時雨亭文庫や明治書院の和歌文学大系がまとまった形で眠っていたこと、三弥井書店の<中世の文学>から『風雅和歌集』註釈本(次田香澄・岩佐美代子)と岩佐美代子『木々の心 花の心 玉葉和歌集抄訳』(笠間書院)が処分されずに残っていたこと、である。
 就中『風雅集』と『玉葉集』の註釈には驚かされた。和歌に関心を抱き、岩波文庫の八代集と新勅撰、玉葉集を読み、一方で定家を核にして中世和歌を読み散らしていた時分、すくなくともわたくしの知る範囲で玉葉風雅の註釈本は殆ど存在していなかった。そうした矢先に出会ったのが、先の2著。舐めるように読み耽ったのを覚えている。読み進める途中、心のどこかに中学時代の折口のエピソードも宿っていたかもしれない。それよりもなによりも枯れきって生彩をなくしてゆく一方の十三代集のなかにあって『風雅集』と『玉葉集』は、八代集の時代を思い出させる雅やかな雰囲気と、『万葉集』を彷彿とさせる朴訥さとおおらかさを孕んだ、正統とも異様とも取れる勅撰集に感じた。爾来、わたくしはこの2つの勅撰集のファンである。
 ──同人誌についていえば、こればっかりはもう持っていることの無意味さを感じて、ごっそりとゴミ捨て場へ運んだことだ。『天空祭』(青心社)をきっかけに荻原征弥の作品にハマって夏冬のコミケへ通い続けたところ、溜まりに溜まることとなったFUKURO KOUJIの同人誌だけは1点も散逸させることなく脇に避難させたが精々か。サークル名も作者名も忘れたけれど、『レイオノレー』というハイ・ファンタジー長編を15巻まで読んでいたが、この作品は完結したのだろうか。
 斯様にして<パンドラの箱>が開けられた結果、だいぶすっきりしたはずの部屋は再び床に本が積みあげられて、幅約1メートル、奥行き約25センチある幾つかの山が作られる羽目と相成った。書き忘れるところだった、高さは約70センチ程である。やれやれ……。
 正月休みはふたたび、本の収納と処分に悩まされることになりそうだ。◆

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