第3440日目 〈北極星の役割を果たした《第九》。──もはや筆を執ることなき「1枚のレコード」から〉 [日々の思い・独り言]

 楽聖ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの第九交響曲に多くの録音ありと雖も、わたくしにとって「この1枚」といえるのは、最晩年のカラヤンとベルリン・フィルの1983年盤をおいて他にない。
 「苦悩を克服して歓喜に至る」──ベートーヴェン生涯の思想は、紆余曲折を経た後、遂にこの畢生の名作で結実した。
 カラヤンの演奏も、まるで己の生涯を振り返るようにして成った、唯一無二の名演といえまいか。既に関係悪化の頂点に達していた指揮者とオーケストラであっても、本気になれば進行中の確執など思わせもせぬ、力強く生命力に満ちた演奏を物すのだ。
 これを特に思い出に残る1枚として挙げるのは、これまでの人生でいつも、北極星のような役割を果たしてきたからだ。目標としていた夢を見失いかけたとき、壁に突き当たって思い悩んだとき、常に道標となり、立って前に進む力を与えてくれたのは、この《合唱》交響曲であった。
 強くあれ、逞しくあれ。振り返ることなく前に進め。北極星と信じたものをのみ信じてそこへ行け。人生は戦いの連続である。満身創痍となっても揺らぐことのない一生を、と望まずにいられない。◆

ジャネット・ペリー(Sp) アグネス・バルツァ(A) ヴィンソン・コール(Tn) ジョセ・ファン・ダム(Bs) ウィーン楽友協会合唱団 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 ヘルベルト・フォン・カラヤン 1983年9月 ベルリン□

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