第3490日目 〈イギリス料理が好きな男が、コモンウェルス崩壊の始まりを考えて嗟嘆する。〉 [日々の思い・独り言]

 エリザベス2世の国葬はつつがなく終わり、ウィンザー城に埋葬された。チャールズ3世の御代に祝福あれ。安倍氏の国葬を結局説明らしいものもないまま強行する岸田政権よ、自壊せよ。
 娘がもう少し大きくなったら、知己のイギリス料理店に連れてゆきたい。フィッシュ・アンド・チップス、ジャケットポテト、シェパーズパイ、ブリティッシュパイ、スコッチエッグ……。そんなものを食べさせてあげたいのだ。問題は飲み物だが──ああ、娘よ、くれぐれもパパが腹の底へ流しこむ黒ビールに関心を抱かないでくれたまえ。
 ──こんなとりとめもない内容の、短い覚書めいた文章を書いているのは、ゴルバチョフ自伝を予定の分だけ読み終えたあと手近にあった佐藤優の『紳士協定 私のイギリス物語』(新潮文庫 2014/11)を気の向くままに読んでいたからだ。
 外務省へ入省した佐藤氏は1986年07月初めから1987年08月末まで、語学研修のためイギリスで生活した。その回想記が『紳士協定』と『亡命者の古書店 続・私のイギリス物語』(同 2018/02)。
 佐藤氏が経験したイギリスは、わたくしが渡英した1990年03月でも健在だったようだ。既にサッチャー政権に陰りが見え始めて、国民の不満が頂点に向かっていた頃だったけれど、社会を支える人々の感情や食文化、ロンドンの書店やチャイナタウンの様子など、記憶にあるのとあまり変わらぬイギリスを佐藤氏の著作に見ることができる。
 翻っていまの、21世紀のイギリスはどうなのだろうか。トラス首相が新しい英国首相に就任し、前述のようにチャールズ3世が史上最年長で国王に即位した。コモンウェルスの連帯は女王の崩御によってさっそく揺らぎはじめ、独立の意思表示をする国も少なからず登場しているらしい。例によってアイルランドとスコットランドは独立問題が再燃し、共和制への移行も真面目に検討されている、と聞く。
 20代の一時は真剣に移住を考えた英国の栄光が、既にむかし話に過ぎなくなっているとは承知している。しかし、と考えてしまう……エリザベス2世の存在と役割の大きさと、時代のあまりに早すぎる変化のことを。
 もはや地上に〈陽の沈まない国〉は残滓も存在しなくなるのか。◆


紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫)

紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫)

  • 作者: 佐藤 優
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/10/28
  • メディア: 文庫



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