第2860日目 〈筑摩書房は小山清の全集を文庫で出してくれぃ。〉 [日々の思い・独り言]

 今日は短く行くぞ。と、柄にもなく宣言したところで、本日のエッセイの始まり、始まり。
 『ビブリア古書堂の事件手帖』を読んでいなかったら、小山清の作品に触れることはなかったのではないか。太宰治の小説を読んでいると、小山に仮託したとされる登場人物に出喰わしたりする。その流れで小山清の作品集を探して読むことがあったかもしれない。が、現実的に考えて、可能性は低かったかも。物事にはすべからくタイミングというものがある、ということだ。
 結果的にわたくしは『ビブリア古書堂の事件手帖』によって小山を知り、ちくま文庫から作品集が出されたときに飛びつくようにして読み、あまりの感激に同じ筑摩書房から出る<大人の本棚>シリーズに収まる1冊、続けて講談社文芸文庫の作品集へ手を伸ばし、偶然という幸運に恵まれて新潮文庫の作品集を手に入れた。初読のとき以来、梶井基次郎と南木佳士と同じく自分の心のずっと奥に大切にしまっておきたい作家の1人にまでなった。要するに、わたくしは小山清の作品に惚れてしまうたのだ。
 その後、筑摩書房から小山清の全集が出ていると知り、その増補版を古書目録やネットオークション等で探しているが、偶さか目にして注文を入れても外れることが続いている。幸いにして市内の図書館が架蔵しているので取り寄せてもらって読み、前述の文庫版作品集には入らぬ随筆にも小説と同じく人生を諦観し、慈しむ眼差しが捉えた事象に、深い興趣を感じたりした。是非にも架蔵した全集である。そう思わせるだけの香気が、そこには馥郁と漂っている。
 しかし、現実的な面で問題が生じるのは否めぬところ。買いこんだその全集を(1巻本とはいえ)如何に家へと運びこむか、無事運びこめたは良いもののそれをどこに置くのか、それに先立つ問題として、帯附き美品が果たしてそう都合よく見出せるものであろうか、加えてなによりも軍資金の問題を解決せねばならぬ。
 それをクリアするための、たったひとつの冴えた解決法がある。要するに筑摩書房が小山清全集を文庫化すればよいのだ。それで物事はすべて円満に解決する──よね? なんというても文庫版全集の雄、数多あるレーベルのなかで誠実さと丁寧さには定評ある筑摩書房だ。前例も沢山ある──漱石、基次郎、賢治、龍之介、鏡花(「全集」ではく「集成」だけれど)、百閒、一葉、敦、オースティン、ドイルのホームズ、久作エトセトラエトセトラ。
 そうしてなによりも、師・太宰治。このラインナップに小山清が加わることになれば、きっと泉下の弟子も落涙されるに違いない……。師弟仲よく全集が同じ文庫に収まる幸福、なににも代え難き喜びといえるのでは? 事の序でに開高健・田中英光も含めてしまえばよろしかろ。
 わたくしはなによりも、『小さな町』に入る短編「よきサマリア人」を文庫で読みたい。「道連れ」「雪の宿」を文庫で、ページの端が丸まるまで、角が擦れるまで、読み耽りたい。これらは架蔵する3冊の文庫に載らぬ作品だ。過去に他から出た文庫にはあるかもしれないけれど、自分が読める状態にないのは事実だから、こんな風に信仰告白する。
 斯様な想いからわたくしは、筑摩書房に文庫版『小山清全集』の刊行を切に希望する。単行本の全集の文庫版は流石に難しいだろうから、せめて小説全作、随筆1/2は読めるようになったら嬉しい……。分冊になっても、勿論構わない。むしろ、大歓迎。書誌データや解説が充実していれば、もっと喜ばしい。
 如何であろう?◆


ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~ (メディアワークス文庫)

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  • 発売日: 2011/03/25
  • メディア: 文庫



落穂拾い・犬の生活 (ちくま文庫)

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  • 作者: 小山 清
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2013/03/01
  • メディア: 文庫



小さな町 (大人の本棚)

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  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2006/10/11
  • メディア: 単行本



日日の麺麭/風貌 小山清作品集 (講談社文芸文庫)

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  • 作者: 小山 清
  • 出版社/メーカー: 講談社
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  • メディア: 文庫



小山清全集

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  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
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