第3506日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第12話(最終回)を観ました。〉 [『ラブライブ!スーパースター!!』]

 遂にこの日を迎えてしまいました。『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第12話最終回、「私を叶える物語」が先日10月09日に放送。例によってしばらくはLLSSロスが続きそうです。
 本話の軸は、前話から持ち越された澁谷かのんの留学問題。「かのんちゃんには留学してほしい」なる嵐千砂都らしからぬ衝撃発言で終わった第11話でしたが、今回はその解決編となる重要なエピソード……のはずが蓋を開けてみれば「なんじゃ、こりゃ!?」と、疑問符が頭のなかを埋め尽くすような内容になっていました。

 結果をいえば、かのんはウィーン国立音楽学校への留学を決めた。学校へ残ることに決めていたかのんでしたが、本話にてLiella!メンバーと母親の説得に背中を押されてようやく自分の気持ちに従うことができ、一度は辞退した留学を決めたのであります。
 マルガレーテが突然入ってきた場面から推測して、それはお客さんのいない時間だったのでしょう、かのんは実家の喫茶店でお母さんと話し合い、留学の話は「誰にでも来るものではなく、あなたにだけ来た話」と諭された。
 どうしてこの場面に父親がいなかったのか、不思議でなりませんね。不自然に感じるのであります。娘の留学について両親が膝を交えて本人と話し合うのが本来でしょう。なのにどうして父親はいなかったのか。仕事が忙しい、とはいえ、あれだけの家族仲を作りあげている澁谷家に於いて、家で仕事をしている父親がその場にいないというのはどう説明されるべきか。どれだけ忙しくても、手を休めて家族会議に列なるのが親であろう。シリーズのお約束を踏襲して、背中でも顎下ショットでも良いから、この場面にかのんパパは描かれて然るべきだった。できればお約束を破棄して顔見せ、或いは喋らせるなどあっても良かったんですけれどね。

 これまでと違ってLiella!は、メンバーの1人が脱けることでその名を冠したグループの活動を停止する、という選択は取りませんでした。そう、かのんが脱退してもLiella!というグループは存続するのです。
 ラブライブ!大会で優勝したグループが、しかも優勝時のメンバーが殆ど在籍するなかで、名前を変えて活動してゆくのは不利でしかありません。知名度はゼロに等しく、事実上イチから再出発することになるのだから。一度は築いた栄光を反古にするも同然なわけです。それでも澁谷かのんという絶対的センター不在のハンデを背負って活動を継続すると決めたLiella!は、かなり強いメンタルを持ったグループといえるでしょう。
 過去にも、代々名称が継承されてメンバーを常に新しくしてきたグループがあるのは知られています。が、それはあくまでモブ・グループであって、主人公グループのそれではない。『ラブライブ!サンシャイン!!』のAqoursはどうかといえば、浦の星女学院がなくなって静真に移ったあとも新生Aqoursとして活動していることがわかっているが、本来の学校とグループが切り離された関係であるため、Liella!と同列に扱うことはできない。
 そんな点でも『ラブライブ!スーパースター!!』はシリーズに新機軸を打ち出した、と感じます。

 かのんが留学しても、Liella!は活動を継続してゆくことに決まった。かのんの留学準備は着々と進んで荷造りも済んだ。春休みだろう、部室に集まっているメンバーが、数日後に出発を控えたかのんがいることに違和感を感く。かのんは何だ彼だと理由をつけられて、「あ〜あ、つまみ出されちゃった……」(21:38-39)とボヤキながら独り、トボトボ帰宅する。──と、そこに現れたのは結ヶ丘女子高等学校の制服に身を包んだマルガレーテ。
 なんでここに? その格好は一体? 伊達さゆりの至芸の一端を堪能できる<動揺かのんちゃん>ですが、普通に考えれば年度替わりを控えた時期ですから、インターナショナル・スクールからの転入でありましょう。そんなマルガレーテがかのんに告げた一言は、そう、衝撃的でしたねぇ(それが視聴者を戸惑わせ、非難されることになる)。「え、こんなのアリですか!」と思わず口走ってしまった。
 かのんの留学先として設定されたのは、ウィーン国立音楽学校でしたね。数多の有名な音楽家を輩出してきた、実在する学校です。かのんが留学する際は、ウィーン・マルガレーテも一緒という。これは、マルガレーテの家が彼女に出した条件であって、音楽学校から出された条件ではなかった。マルガレーテはいわば、かのんのバーターであります。
 そのマルガレーテが独り下校するかのんに曰く、「留学は中止になった」と。自分たちの都合によって留学の話はなくなった、留学を辞退した、という意味では勿論、ない。「学校から連絡が来ているはず」という続く台詞からそれが、ウィーン国立音楽学校からの通達であることがわかります。事実、直後の場面でかのん宛エアメールがウィーンから届いている。この封書の中身が、留学取消を伝える文面であることは最早疑いようがないでしょう。
 ではなぜ、ウィーン国立音楽学校は澁谷かのんの留学を取り消したのでしょうか。それについては(現時点では)想像するより他にありません。もしかすると、ちぃちゃんや恋ちゃんパパが裏から手を回したのかもしれない。勿論、冗談であります。
 真面目にいえば、この点は第12話ラストで勃発した話題なので、そのまま放送が決定した第3期で理由は触れられるはず。「定員オーバー」とか「ステイ先の都合が悪くなった」とか、そんな取って付けたような理由になるのは目に見えていますが。
 ただ可能性として否定できないのは、4月からのかのんの受け入れはできなくなったので、当校の新年度が始まるタイミングで来てくれないか、という内容であることもじゅうぶん考えられることであります。
 真相は未だ藪のなかですが、この留学取消の報はマルガレーテとかのんだけでなく、結ヶ丘女子高等学校の理事長宛にも出されていなければ可笑しい。こうした書状が別日に投函されるとは考えにくいから、かのんとマルガレーテ、結ヶ丘女子高等学校に届いたのはほぼ同じタイミングであった、と考えて良いでしょう。それにどうやら、春休みの間も理事長はちゃんと学校に来て執務をこなしている様子(当たり前なんだけど)。
 然らば理事長が直接かのん自身に確認等しても良さそうなものですが、この件について理事長がまったく動いていないのが、なんとも解せぬのであります。本人のためになる、喜ぶことであれば直接伝えるけれど、そうでない場合は関知しない、とでも? 恋ちゃんママが願った結ヶ丘女子高等学校建学の理念、願いを踏みにじるような行いではないか。……この理事長不関与は、尺の問題とかそんな現実的な話で済まされる話ではない。せめて説明的な台詞の一言でもあればねぇ。
 余談ですがこのエアメール、未開封状態です。宛名面にウィーン国立音楽学校の名称が住所と一緒に印刷されている。かのんの名前に付された敬称は「An:Frau」とドイツ語である(22:13)。これを見てかのんママが、「お母さん、ドイツ語わからないわ」と呟き、ありあが(翻訳してもらうために)父親を呼ぶのだけれど、いや、これちょっと可笑しいでしょう。敬称だけなら意味も察しがつくだろう。開封していないのにドイツ語わからない云々は変だろう。よしんば開封せられて書面を見ていたとしても(倫理的にどうか、という問題はさておき)こうした海外に宛てた正式通知ってたいてい英語で書かれるものではあるまいか。いやはや、面妖であります。

 留学に関して、ここで脚本の弊に話題を移します。
 μ’sで物議をかもした留学騒ぎ、これがいまに至るも事ある毎にネットで話題になることを勘違いして花田十輝氏は、「よし、今回も留学問題を起こして最後の最後で卓袱台を引っ繰り返してみるか! しかも今回は主人公の留学だ。これは話題になること間違いなし!!」なんて脳天気で天邪鬼な気持ちになってしまったのだろうか? 結果、(放送された)第12話は『ラブライブ!』シリーズ屈指の仰天エピソードとなり、最悪の流れをもたらすことと相成った。賛否両論どころか紛糾続々の状態です。
 留学中止がもうすこし綺麗にまとめられていれば他の言い様もあるが、放送されたアレを観てしまったら、なにをどういうこともできない。その義務はないけれど、擁護できる要素が1つもないのでは、もう突っ放すしかないのです。アバタもエクボというけれどこの場合、アバタはアバタなのだ、と嘆息せざるを得ないのです。
 うーん、これね、第11話放送時から思うていたのですが、例えば『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第2期ラストの上原歩夢のように、(取って付けたような)短期留学で済ませることは出来なかったのかな。それとも先々の目算が既に「完成」していて、その上で斯く処理したのかな。マジでその程度のお茶濁しで良かったのでは、と疑問でならぬのであります。
 叶うならば、いちばん最初に書かれた第12話のシノプシスや脚本の第一稿を読んでみたい。そうすれば、なにが省かれ、なにが加えられ、当初の段階からアフレコ用台本までの間で物語がどのように改変されたか(改悪されたか)を、この目で確かめることも出来ようから。
 およそ此度の第12話を観ていて、「留学」という話題の扱いが軽すぎるように思えます。荷造りを済ませている、出発間近である、ということは、既に澁谷家は少なからぬ額の金額をこのために工面している、振りこまねばならぬものは振込済みである、ということであります。
 旅費や交通費、向こうでの生活費や学費、etc.etc. 劇中ではしっかりと語られなかったけれど、学業にかかるすべての費用を学校が負担するとしても、結構な額を準備しておかねばならぬことに変わりはない(そう考えると、可可の家はかなりの富裕層に属していることがわかりますね)。生活面のすべてに於いても学校側が負担するわけではないのである。
 かつてドイツはデトモルトの音楽学校に留学して帰国したいまはプロ奏者として活躍している知人に拠れば、学費は免除されていたが生活に関してはアルバイトしないとならなかったそうです。
 ホント、花田氏の社会感覚というか、その浮世離れっぷりと無知蒙昧ぶりには呆れてしまいます。この人は原作附きアニメのシナリオだと無類の力を発揮するのに、そこで培われた技術や知識をオリジナル作品に粒の一欠片も活かすことができないとは、なんとも哀れと思うのであります。
 あと、オプチャで「こんな中途半端に留学するか?」と書込みがありました。これについて、頼まれてもいないのに付言すれば、留学するタイミングは人それぞれ、留学先によって異なる。かのんの場合、日本の年度替わりにオーストリアに行くのはむしろ自然なことと考えます。
 外国語も満足にできない人がいきなりカリキュラムについてゆくのは、ほぼ不可能というてよい。たとい音楽学校で実技を伴う講義が中心を占めるとはいえ、加えていえばかのんがどの学科に籍を置くことになるのか不明ですが、座学の講義も当然あるわけです。音楽史とか音楽理論とか、ですね。それに実技メインの講義も教授のいっていることがわからねば、ただのお金と時間の盛大なる無駄遣いでしかありません。
 そのために、外国人学生には語学習得の研修カリキュラムを用意している学校もあるのです。確かウィーンにも、学校の別なく留学生を受け入れるそうした語学学校のような場所があったはずです(そういえば外務省もそうしたカリキュラムを持っているそうですね)。今度ウィーン在住の友人に訊いて、その結果をここに盛りこみましょう。
 唐可可の帰国問題はラブライブ!大会優勝したことで解決したのですが、欲をいえばそれに一言でも二言でも、可可自身や平安名すみれ他の口から劇中で語られてほしかった、と思うのは、わたくし1人だけなのでしょうか。優勝イコールであったのは承知していますから、むしろこの欲求は追認、であります。あらためて劇中でそれに触れてもらい、ああ良かったね、と安堵したかったのであります。
 さて、脚本への疑問と愚痴と悪口雑言はここまでにして。

 LLSSを過去シリーズと較べたとき、1話分削られることのどれだけ物語全体の構成に支障を来すか、その例をLLSSで知った気が致します。
 そのためか、各キャラクターの深彫りがされず、時にストーリーも行き当たりばったりな、力任せで済ませた展開が目立ったように感じるのであります。第2期に関していえば、果たして第06話の<恋ちゃん、ゲーム沼に嵌まる>エピソードは他の形で、つまりゲームというアイテムを用いず他の手段を以て語るべきを語ることはできなかったのだろうか。生徒会長はポンコツ化しなくてはならない。それは綾瀬絵里から連綿と受け継がれてきた、神聖不可侵の伝統である。とはいえ、此度の恋ちゃんポンコツエピソードが果たして(放送された形で)必要だったのか、わたくしは疑問でしかありません。空気と化しつつあった恋ちゃんを表舞台に立たせるためにむりやり用意された、(不要の)寄り道エピソードにしか捉えられないのであります。
 逆に1話減ってなお上述のような寄り道をするくらいなら、むしろ千砂都の心情の変化──かのんとの関係性と立ち位置の変化、それに伴う心理の揺れ動き──にエピソードを割いてほしかった。そちらの方が余程ストーリーの根幹に関わると思うからであります。そうすれば、かのんの留学を後押しして独り日本で頑張る、という第11〜12話の彼女の言動はより理解できるようになり、共感できるものになったのではないでしょうか。
 1話分削られたことの弊害に目を向けましたが、そんななかで可可とすみれの関係性がきちんと結着できたのは良かった、と思います。周囲の(熱い)要望もあったと思うが、百合とかなんとかではなく第1期のいがみ合いに始まって、すみれセンター事件(ノンフィクション騒動)、可可の帰国問題、鬼塚事件、東京大会は2年生だけで歌うか問題を経て、神社境内で結ばれた2人の本当の絆を見せてもらえた場面(そうして第11話での可可の悠然たる嫁っぷり!)に至るまで、じっくりゆっくりその変化と進展が描かれたことは、全体を通して1、2を争う見所にもなった。時にあまりの過ぎたるいがみ合い(罵倒)ゆえ誤解や非難を招きもしましたが、まァ、落ち着くべきところに落ち着いたな、というのが正直な感想であります。
 全体的に第2期は、単純に人数が増えたこともあって、全体像とピントのぼやけたものになってしまったというのが、わたくしの現時点での結論である。
 
 ※かのん留学補記;彼女の留学が中止になっても、学内でそのことを(表立って)非難する生徒はあるまい、斯様な人物あらば即、結ヶ丘女子高等学校版KGBによって消されることは必至。なぜならば、結ヶ丘女子高等学校は、澁谷かのんを絶対的頂点に、現人神に戴く組織なのだから。そんな意味でもやはりかのんは、高坂穂乃果の唯一無二の後継者といえるだろう。

 さて、第12話放送終了後に配信された「ラブライブ!スーパースター!! Liella!生放送 〜TVアニメ2期完走記念 拡大SP〜」で第3期の制作が発表された。それに伴い、新キャラクター1名の声優一般オーディションの開催も。いずれも第1期開始時点で決定していた既定路線といえましょう。主人公が2年生ではなく1年生、しかも新設校の1年生ということで当初から、かのんと可可、すみれ、千砂都、恋の5人が卒業するまでスクールアイドルLiella!の物語を描くことは織りこみ済みであった──第1期開始の段階で”黄金の3年間”の青写真は出来上がっていたのであります。
 ただやはり気になるのは、かのんたちが3年生に進級した時点で、いったいどんな人物がLiella!3期生として加入するのか、ということかもしれません。現行Liella!9人+マルガレーテ+澁谷かのんありあ+新キャラクター(新キャスト)の12人体制になるのか、「レジェンドスクールアイドルが築いた“9の奇跡”」は発展的破壊に留まらずもはや『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』が示した12人にもこだわらないのか、そのあたりは不明だ。しかし、オープンキャンパスの折やって来たありあに可可がぶつけた台詞──「姉妹でスクール・アイドル、熱いです!!」──が伏線になっていたら、と考えると、ありあの加入は不可避事項になりましょう。すみれ妹の年齢や学年が定かでない以上、ありあは最有力候補といえます。マルガレーテは加入ではなくソロで活動する可能性もある──そもスクールアイドル部にスクールアイドルは1組しか認められないわけではあるまい。
 とまれ、不安と諦念と期待が入り混じった気持ちで第3期を待つと致しましょう。
 後日、もしかするとこの第3期についての短文と、書こうと思ってずっと後回しにしてきた結ヶ岡女子高等学校に関する疑問二、三を箇条書きした短文を、ここでお披露目できればな、と企んでおります。

 最後になりましたが、『ラブライブ!スーパースター!!』第2期に命を吹きこんだ全キャストの皆様、製作に携わった製作スタッフと放送に携わったNHKスタッフのすべての方々に、感謝の花束を。素敵な物語を届けてくださって、ありがとうございました。◆

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